ニーズが高まる防音リフォーム・防音工事とは

近年、生活スタイルの変化や趣味の多様化などに伴い、防音設備の整った物件へのニーズが高まっています。
しかし、防音と一言で言ってもその種類やレベルは多種多様。専門知識の無い不動産屋もたくさんあります。また、防音工事を行うにしても費用がかさむため、まず「誰/どこに相談してよいか分からない」「何から手を付けたらよいか分からない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。
ここでは、まずおさえておきたい防音の基本的な知識や対策についてご紹介致します。


そもそも、音とは

的確な防音対策をとるためには、まず防音の目的や音の種類を明らかにしておかなければなりません。目的に関しては、屋外や隣家などからの騒音を防ぎたいのか、自宅から発する音が外に漏れるのを防ぎたいのか…。また、音の種類に関しては、人の話し声やテレビの音なのか、車などの振動音なのか、楽器の音なのか…。
はじめに、音の種類について簡単にまとめてみましょう。

音の種類

音は、振動です。その振動の伝わり方の種類によって、「空気伝搬音」と「固体伝搬音」とに分類されます。「空気伝搬音」とは、空気中を伝わっていく音のことです。音源から離れるほど音は小さくなり、塀や壁などを通すと更に小さくなります。

いっぽう「固体伝搬音」とは、音源から発生した振動が床などの建築物を振動させ、伝搬先の壁などに振動を伝えて空気中に音となって現れるもののことです。糸電話はこの原理を利用したものといえばイメージが湧きやすいでしょうか。「固体伝搬音」は、伝搬経路や伝搬先である固体の形状や構造などによって大きく異なってきます。
まずは、防音したい音の種類がいずれのものであるかを知ることが、防音対策の第一歩といえます。

空気伝搬音と固体伝搬音
空気伝搬音と固体伝搬音

音の大きさや強さについては、「dB(デシベル)」という単位によって表されます。どんな音がどんな大きさなのかについて、一般的な例を下記に挙げてみましょう。


【静か】
20dB 呼吸音、木葉のそよぐ音など
40dB 図書館、静かな住宅街の昼、ささやき声など
【日常音】
50〜60dB 人の会話、携帯電話の着信音、木製ドアを開け閉めする音など
【うるさい】
70〜80dB 電車内、水洗便所、怒鳴り声など
90〜100dB カラオケ、工場、ピアノ・弦楽器・木管楽器、オーケストラなど
【非常にうるさい】
110dB ジェット機、自動車の警笛、金管楽器など
【堪えがたい騒音】
120dB 電車が通る時のガード下、ドラムなど
130dB ジェット機の離陸音、ロックバンドなど
140dB 至近距離での落雷など

しかし、「dB」だけでは一概に判断できないのが防音の難しさ。例えば、90〜100dBのところに挙げた楽器でも、ヴァイオリンやギターなどの弦楽器や木管楽器などは「空気伝搬音」の対策を講じればよいのですが、ヴァイオリンと同じ弦楽器でもチェロ・コントラバスや、ピアノのような床に接する楽器については、「空気伝搬音」だけでなく「固体伝搬音」についての対策も考慮しなければなりません。そして「固体伝搬音」の方が、対策が難しいということも覚えておいて下さい。また、楽器の場合は奏者や曲次第でも異なってくるのが難しいところです。

防音とは

防音の目的や音の種類を明確にしたら、次は具体的な対策方法を検討してみましょう。
自宅から発する音(生活音やオーディオ・楽器などの音)を防音したい場合、戸建と集合住宅とでは、一般的には戸建の方が対策しやすいといえるでしょう。上記の音の種類のところで説明した通り、「空気伝搬音」は壁や塀によって大部分が減衰しますし、「固体伝搬音」も建物が異なれば振動が伝わりにくくなります。ただ、主に都市部の住宅街などで隣家とかなり近接している場合や、自動車や公園など外からの騒音を防ぎたい場合などは、また対策の考え方や方法が異なってきます。


マンションなどの集合住宅では、隣家だけでなく上下の階に対しても考慮しなければなりません。ここで参考になるのが、L値という指標です。L値とは、床衝撃音に対する遮音性能を表す単位のことです。つまり、上階で音を出した時にどれくらいの音が階下に伝わるのかを表わした数値であり、L値が小さいほど階下に音が伝わりにくいということになります。一般的には、L-40だとお互い気兼ねなく生活できる範囲、L-60になると階下に音が聞こえるもののお互い許容できる範囲、とされています。また、このL値は、軽いものを落とした時などに伝わる軽量音・LL(L=Light weightから)や、人が歩いた時などに伝わる重量音・LH(H=Heavy weightから)の2種類で表されます。


基本的な防音の考え方として、「空気伝搬音」には「遮音」と「吸音」、「固体伝搬音」には「防振」と「制振」の対策を施します。

「遮音」とは
音をできるだけ多く反射させて音を遮断することで、抜ける音が小さいほど遮音性が高いといえます。遮音材として専用のパネルやシート、石膏ボード、鉛などを使用します。
「吸音」とは
音をできるだけ多く吸収させて音を反射させないことで、反響させないものほど吸音性が高いといえます。吸音材としてフェルト、グラスウール、ロックウール、発泡ウレタンなどを使用します。
「防振」とは
音の振動の伝達をできるだけ少なくして伝えないようにすることです。防振材としてゴムやフェルト、金属と特殊アスファルトなどを混ぜたサンダンパーなどのマットを音の震動源に敷いたりします。
「制振」とは
音の振動自体を減らして音の発生を防ぐことです。ゴムや鉛などのシートを音の震動源に直接取り付けたりします。

防音工事の内容

防音施工の基本は、重くする・厚くする・隙間を作らない、の三点です。まずはお部屋の、サッシの種類、窓ガラスの種類、換気の状態、断熱材の種類、床材の種類や機能などを確認してみて下さい。また、部屋・住宅自体に防音施工をしたいのか、楽器やオーディオ専用の防音室を室内に設置したいのか、などによっても、どのような工事が必要なのかが異なります。
階下へ足音などの生活音が伝わるのが気になる、階下からの音がうるさい、隣室からの音がうるさい、など、ベーシックな生活音対策の防音工事は床と壁の対策が基本です。オーディオやホームシアターなどを楽しみたい場合の防音工事は、床と壁に加えて天井の対策も必要となります。楽器や歌などを気兼ねなくやりたい場合の防音工事は、更にドアや窓などの開口部の対策が重要になってきます。

一般的な防音施工について、対策場所別にまとめてみました。

集合住宅で階下へ伝わる音を抑えるため、床衝撃音を軽減する措置を施します。遮音材をフローリングの下に仕込んだり、遮音フローリングを使用したりすることで、軽量音・LLは大幅に防ぐことができます。重量音・LHを防ぐには、建物自体をより強固にするなど構造的な改善が必要とされます。遮音フローリングを選ぶ際には「LL-40」、「LL-45」くらいのL値を目安にしておくと、階下へ響く子供の足音なども大幅に軽減することが期待できます(「LL」は数値が小さいほど防音性能が高まります)。また、フローリングの床はカーペット貼りの床よりも音が4倍響くというデータもあります。一般的なカーペットでもある程度防音できますが、防音専用のカーペットやマットを併用することで、更に防音効果は高まります。

壁の防音の基本

壁の防音の基本は、吸音材と遮音材を併用することです。音を発する部屋側に吸音材や、吸音効果の高い布製や織物製の壁紙などを使用し、吸音材と壁との間に遮音材を仕込むことが基本的な壁の防音対策です。

吸音材について

吸音材はグラスウールやロックウールなどのふかふかした素材、遮音材は石膏ボードや鉛シートなどの固い素材で、これらを何重かに重ねて多重構造にすることで防音効果の向上が期待できます。更に、音が漏れてほしくない部屋側の壁に大型の家具などを設置することでも多少の防音効果が期待できます。

音場とその考え方

壁の防音施工をする際に気をつけなければならないのが音場です。音場とは、その空間が持つ音の広がり方・響き方のことをいい、空間に適した音場レベルになっていないと不快感を感じます。いくら防音をしっかり対策できていても、リラックスできなかったり、音楽などを楽しめない空間となってしまっては意味がありません。
吸音材や調音材などをうまく活用して、壁の音響を調整するなどの対策も考慮に入れる必要があります。遮音性能と音響効果とを兼ね備えた防音クロスやパネルなどを使用する専門業者もありますので、知識と経験を持った信頼できる業者に相談することをおすすめします。

天井

天井は、むやみに厚く重い素材を使用したり、防音材を何重にも重ねたりすると落下の危険性があるため、やはりしっかりとした知識と経験のある業者に施工をお願いしましょう。基本的な構造は、壁の防音と同じように吸音材と遮音材の組み合わせとなることが一般的です。

窓・ドアなどの開口部

部屋の気密性を高めるほど、防音効果は向上します。防音したい部屋には窓が無いことが理想的ではありますが、高性能のサッシを使用したり、二重ガラスを使用したり、窓自体を二重にしたりなど、できることはいろいろあります。ドアも、まずは音漏れを防ぐために隙間を塞ぐことが基本となります。本格的に防音したいなら、ローラー締ハンドルの、重く分厚いドアを使用すれば、防音効果は格段に高まります。

繰り返し述べてきたように、防音工事はその目的や、施工したい部屋・建物の状況によって細かく対策方法が異なります。まず、自己判断は禁物。そして、必ず信頼できる業者へ細かく相談することが失敗しない秘訣といえるでしょう。また、できる限り工事費用を抑えたいところではありますが、安易に格安工事を請け負う業者に飛びつくのは失敗のもと。ピアノ対応の防音室6帖で200万円前後が平均的な相場 とみて、慎重に判断しましょう。

様々な防音サービス

メーカーや建設会社などからも、様々な防音サービスが販売されています。また、中小企業ながら高い技術と豊富な経験を持った防音の専門業者も多くいます。

●YAMAHAの防音室「アビテックス」
楽器を演奏する人なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。YAMAHAが提供する防音室のサービスです。部屋の中に防音室をまるごと入れてしまうユニット式が有名ですが、部屋自体を防音室にリフォームできる自由設計タイプのものもあります。
●カワイの防音室「ナサール」
こちらはピアノメーカー・カワイのグループ会社である、株式会社カワイ音響システムのユニット式防音室。自由設計タイプや、業務用、またペット用の防音室まで、製品の種類が豊富です。
●ダイワハウスの快適防音室「奏でる家」
これから一戸建てを新築する予定の方にはこのような選択肢もあります。ダイワハウスの「xevo(ジーヴォ)」というシリーズに防音室を付けることができます。もともと防音性能に優れた建物をベースに設計・施工するため、低価格で高性能、かつ住空間としても快適な防音室をつくることができるのが魅力です。
●宮地楽器 防音工事部
楽器店ならではの専門知識で、防音効果だけでなく音場効果についても最適な防音施工をしてくれます。演奏レベルや楽器別の対策にも細かく応じてくれるのは、楽器店ならではです。
●soundzone 環境スペース株式会社
個人住宅のピアノ室から、プロ仕様の音楽スタジオやダンススタジオまで、防音・音響工事を手がける専門業者。機能性とデザイン性を追求したオーダーメイドの設計・施工を行い、社内でも日々研究を重ねるなど、こだわりを持った取り組みをしている会社です。2003年の設立以来、1000件以上の実績があります。
●高橋建設株式会社
1979年創業、老舗の防音工事専門業者。ユニット式の「ミュージックキャビン(組立式防音室)」と「ビルトインタイプ防音室」の二種類の施工方法をもとに、製造・施工・メンテナンスまで自社一貫で行っています。スタジオ、公共機関、医療施設、各種研究機関のプロユースから、個人住宅のオーディオルームや楽器防音室、集合住宅や音楽ホールまで、幅広く手がけています。
●日本防音株式会社
「音漏れの無い完全防音」を謳い、豊富な施工実績を持つ専門業者。個別の案件ごとにゼロベースからオーダーメイドで設計を行います。工場騒音対策や防音測定・音響調査なども手がけており、蓄積した自社の音響測定ビッグデータに基づく設計・施工と、綿密な施工後の音響検査により、高精度な防音室を実現している音のプロフェッショナル集団です。渋谷最大級のライブハウス&クラブや、日本最大級のリハーサル&レコーディングスタジオなどを手がけた実績もあります。
●日本板硝子環境アメニティ株式会社
防音を含め、「空気」・「光」・「熱」・「電磁波」等に関する環境改善の、調査・測定から設計・施工までを自社一貫で行う老舗業者。ピアノ防音室・オーディオリスニングルーム・録音スタジオ・音楽ホール・学校音楽教室・鉄道道路防音壁・工場騒音対策・各種防音BOXなどを手がけるほか、防音ドア・化粧吸音材・遮音パネル等の製品も取り扱っています。施工費用は多少高めのようですが、最先端の素材と技術を用いた設計・施工の精度には定評があります。
●アコースティックグループ
年間250〜300件の施工を手がける、音楽家向け専門業者。自社一貫体制で、高性能な防音室がリーズナブルに実現できます。建築士による音響設計コンサルティングに力を入れており、現場状況に合わせてフレキシブルに提案・対応してくれます。ピアノ室を特に多く手がけており、自社のオープンスタジオにて定期的にピアノ室づくりのセミナーや、体験・相談会なども開催しています。
●ピアリビング
自分でできる防音グッズが購入できるメーカーです。グッズの紹介だけでなく、防音の基本的な知識についてもサイト上でいろいろ紹介されています。ここの防音グッズを利用すれば自力でも本格的な防音対策ができますが、重さ・厚さ・密封性が重要な防音施工において、やはり自力で施工するには限界があります。
●個人用ダンボール防音室「だんぼっち」
こちらは、自分で組み立てられるダンボール製の簡易防音室というユニークな製品。楽器の演奏などはできませんが、10万円以下で設置も撤収も簡単なので、自宅で勉強などの作業に集中したい場合には重宝しそうです。

防音工事もフロンティアホームプラスへご相談いただけます

防音ニーズが高まっているのに対して、防音物件の需要は追いついていないのが現状。また、防音物件や防音対策・工事についてしっかりとした知識を持っている不動産屋は決して多くはありません。フロンティアホームプラスでは、「土地から購入して防音性能の高い家を新築したい」、「中古マンションを購入して防音リフォームしたい」などのご希望にお応えしております。まずは、お気軽にお問い合わせを。知識と経験豊富なスタッフが、もちろん無料で お客様のご相談に応じます。