不動産と相続についてー相続の基本

相続イメージ「相続」はある人が亡くなった際に、死亡された人の不動産などの資産を配偶者や子などの親族が引き継ぐことを言います。
民法第八百八十二条において「相続とは、亡くなった人の財産上の権利・義務を引き継ぐことで、死亡によって開始する」と定められています。
相続はある日突然、身に降りかかってくることがほとんどです。

ここではまず、突然の相続にもあわてないために、知っておくと役に立つ「相続の基本」についてご説明します。(※記事作成 2017年12月)


相続について

「相続」とは、誰かが亡くなったときにその人の配偶者や子供などが遺された財産を引き継ぐことです。亡くなった人のことを「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と言います。

相続人は誰か

相続人になることのできる人は民法で定められていて、これを法定相続人といいます。それ以外の人は相続人になることができません。ただし遺言によって法定相続人以外の人に財産を遺贈することは可能で、これは民法の規定に優先します。
まず、被相続者に配偶者がいる場合は配偶者は常に相続人となることができます。その他の相続人は以下の順位で決定されます。

  1. 子(既に死亡している場合には孫、孫も既に死亡している場合には曾孫、…)
  2. 親(既に死亡している場合には祖父母、祖父母も既に死亡している場合には曽祖父母、…)
  3. 兄弟姉妹(すでに死亡している場合には甥・姪。ここまで)

前の順位の相続人がいる限り、後の順位の人は相続人になるこができません(被相続人に子供がいる場合、親は相続人になれない)。

遺産分割

相続人が全員確定し、相続財産の全てが判明した段階で、個々の財産を各相続人に分配するる手続を行います。これを遺産分割といい、どのように分割するのかを相続人全員で話し合うことを遺産分割協議と呼びます。
遺産分割の方法については、相続人全員が合意すればどのように遺産を分配しようとも 自由ですが、1人でも合意しない相続人がいる場合には遺産分割協議は成立しません。
遺産分割協議で共同相続人全員の合意が得られた場合は、具体的な分割の内容を記載した上で、「遺産分割協議書」に相続人全員が署名・捺印します。この遺産分割協議は不動産の登記や銀行預金などの名義変更をする際に必要となります。
なお、遺言がある場合には、原則的に遺言で指定された通りに遺産が分割されるため遺産分割協議は不要となります。

相続される財産とは

相続される財産を相続財産といい、プラスのもの(資産)とマイナスのもの(負債)が含まれます。

プラスの財産の例
  • 土地(借地権も含む)、建物
  • 自動車、家具、美術品
  • 現金、預貯金、有価証券(株式、債券など)
  • 貸付金
  • 著作権
など
マイナスの財産の例
  • ・借入金(住宅ローンなど)
  • 未払い金(税金、医療費など)
  • 損害賠償責任
  • 保証債務(連帯保証人など)
など

相続というと家や土地、お金を引き継ぐというイメージが持たれがちですが、原則的にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産も合わせて引き継がれるので注意が必要です。簡単に言うと、被相続人に借金があった場合、相続人がその借金を代わりに返済しないといけないのです。プラスの財産だけを相続する、ということはできません。

相続しなければならないのか

相続が開始すると、上述のようにマイナス財産も相続されます。このときプラスの財産の方が多い場合は問題ないかもしれませんが、マイナスの財産が多い場合はできれば引き継ぎたくないと考えるのが素直なところでしょう。
そこで民法では、プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合について、その支払義務を免れる方法として「相続放棄」「限定承認」の2つを定めています。

相続放棄
プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない、という選択をすることができます。これを「相続放棄」といいます。相続を放棄するには、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。家庭裁判所で相続放棄が認められれば、その人は初めから相続人でなかったということになります。
限定承認
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからない場合、「限定承認」という選択もあります。マイナスの財産はプラスの財産で相殺して、まだプラス財産が残っていればそれは引き継ぎ、マイナス財産しか残らなければその残った債務は引き継がなくてよいというものです。

限定承認をするためには、自分への相続が開始されたことを知ったときから3ヶ月以内に申し立てをしなければなりません。相続放棄の場合と大きく異なるのは、相続人全員が協働で申し立てることが必要である点です。
ただし、限定承認は相続人が一人でも反対すると不可能なこと、財産目録の提出が必要であることなどからあまり利用されていないのが実情です。