不動産と相続についてー不動産を相続する際の手続きの流れ

相続イメージ相続がどういうことなのか基本が分かったところで、次に「不動産を相続する際の手続きの流れ」についてご説明します。


まずはあなたの「相続分」を確定させましょう

例えば、自分のお父さんが亡くなったとします。さて、亡くなったお父さんが土地を持っていたとします。その場合に「自分は跡取りだから、父の土地は自分のものだ」となるかというと、必ずしもそうなるわけではありません。
故人の遺産、これを法律上は「相続財産」と言いますが、そのうち自分の取り分のことを「相続分」と言います。あなたが相続財産を手に入れるためには、この「相続分」を確定させる必要があります。 そのためには、財産を持っていた故人(被相続人)に対して、財産を受け取る人間(相続人)がどれだけいるかを確定させる必要があります。

遺言書があった場合

故人が「遺言(書)」を残していた場合には、その遺言に従って相続財産が分配されることになりますが、必ず遺言どおりに財産が分配されるのかというとそうではありません。
まず遺言が有効であるかどうかを調べる必要があります。遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密方式遺言」の3種類があります。これらについての詳しい説明は省きますが、それぞれ有効であるための条件が異なりますので、まずは遺言が有効かどうかを確定させましょう。

遺留分に注意

また、仮に遺言が有効であったとしても、その遺言の内容が他の相続人の「遺留分」を侵害していないかも確認する必要があります。
遺留分とは、それぞれの相続人に認められた最低限の取り分のことを言います。これは、各相続人に生活の保障をするための制度で、民法1028条に規定があります。

具体的には、

  1. 直系尊属(故人の父母、祖父母など)のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1(1028条1号)
  2. それ以外の場合は被相続人の財産の2分の1(1028条2号)

と決められています。

遺産分割協議をしよう

遺言書が存在してもしなくても、相続人を確定させ、また遺留分を侵害するような遺産の分配がないよう、相続人が集まって相続財産の分配方法を決める話し合いがなされるのが一般的です。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議を経て、はじめてあなたの相続分が確定します。

相続の「登記」

遺産分割協議を経て、亡き父の土地が正式にあなたのものとなりました。その場合、次に土地の「相続登記」をすることになります。

登記とは

不動産(土地と建物)の所有権者や、その不動産に付属した権利(抵当権や地上権など)とその権利者を表示(法律上は「公示」と言います)するものです。
後述するように、登記には手数料がかかる上に手続も面倒です。そして、あなたが本当の権利者であれば、登記をしてもしなくてもその不動産はあなたのものであることは変わりないのですが、登記をしていないと何かあったときに困ったことになってしまいます。
たとえば、あなたが登記をしないうちに他人が勝手に自分名義で登記をしてしまったとします。そしてその不動産が事情を知らない他人に転売されてその登記がされてしまうと、あなたは不動産の所有権を失ってしまうことがあります。
また、あなたが銀行からお金を借りる際に土地を担保にすることを要求されるかもしれません。その際には、あなたがその不動産の登記上の所有者でないと、抵当権などの担保をつけることができません。

このように、登記をしないともしものときのデメリットが非常に大きいです。不動産は価値の非常に高いものですので、ぜひとも相続の登記をするようにしてください。

法務局へ行こう

登記をするためには、法務局へ登記の申請をする必要があります。
申請書には所定の書式があり、また添付しないといけない資料もいろいろあったりします。インターネットで調べたり、法務局の職員さんに相談して申請手続を進めても構いませんが、登記業務の専門家である「司法書士」へ申請の代行を依頼すると簡単でしょう。
登記の申請の際には手数料(登録免許税)がかかります。また、司法書士に依頼した場合には司法書士に謝礼も払わないといけません。

不動産の相続登記については次のページで詳しくご説明しています。

不動産の相続によってかかる税金について

あなたが不動産を相続した場合、「相続税」を払わなければならない場合があります。 相続税は、払わなければならない場合と、払わなくてもよい場合があります。これは、相続した不動産の価値が「基礎控除」の範囲内かどうかによって決まります。

基礎控除とは

「基礎控除」とは、相続遺産の課税対象となる金額の一定額を、相続税の非課税枠とする制度のことをいいます。そして、相続税の課税対象は、不動産の価格から基礎控除額を差し引いた残額となります。

【基礎控除額の計算方法】
3000万円+600万円×法定相続人の数

計算式を見てもよくわからない方もいらっしゃると思いますので、実際にいくつかの事例を使って説明していきましょう。

【Case①】不動産の価格が4000万円、法定相続人があなた1人の場合
この場合の基礎控除額は、3000万円+600万円×1人=3600万円となります。
不動産の価格は4000万円ですので、4000万円-3600万円=400万円が、この場合の相続税の課税対象となります。
【Case②】不動産の価格が5000万円、法定相続人があなたを含めて4人いる場合
この場合の基礎控除額は、3000万円+600万円×4人=5400万円となります。
不動産の価格は5000万円で、基礎控除の5400万円以下となりますので、この場合は相続税を払う必要はありません。

相続税の金額の計算方法について

今まで説明しましたように、相続不動産の基礎控除を超えた部分が相続税の課税対象となりますが、具体的な相続税の金額は、「税率」「控除額」によって決まります。それぞれ以下のようになっています。

課税対象額 税率 控除額
~1000万円 10% 0円
~3000万円 15% 50万円
~5000万円 20% 200万円
~1億円 30% 700万円
~2億円 40% 1700万円
~3億円 45% 2700万円
~6億円 50% 4200万円
6億円を超える場合 55% 7200万円
【相続税の計算方法】
相続税=課税対象額×税率-控除額

この計算式に、上の表の該当する数字を当てはめれば具体的な金額を計算することができるのですが、これも式と表だけではわかりにくいと思いますので、いくつかの事例を使って説明していきましょう。

【Case③】相続税の課税対象額が4000万円の場合
この場合、上記表の「~5000万円」を見ていただくと、「税率」が20%、「控除額」が200万円となっています。したがって、相続税額は
4000万円×20%-200万円=600万円
となります。
【Case④】相続税の課税対象額が1億5000万円の場合
この場合、上記表の「~2億円」を見ていただくと、「税率」が40%、「控除額」が1700万円となっています。したがって、相続税額は
1億5000万円×40%-1700万円=4300万円
となります。

相続税についてあとのページで詳しく説明しています。そちらもご覧下さい。

以上の説明は、相続税についてのあくまで一般論、原則論です。実際には、相続税の課税対象外となる場合(非課税財産)や、生前贈与財産が相続税の対象になるなど、細かい決まりごとがありますので、実際に相続する際には専門家と相談をするようにしましょう。