不動産と相続についてー相続税の控除などについて

不動産相続の税控除

相続税の基本について知っていただいたところで、ここでは相続税の控除などについてご紹介したいと思います。
また、相続税って実は課税されない人の方が多いということはご存じでしょうか。相続税は控除される額が大きく、実際に相続税が申告される割合は亡くなった方のうち5%程度なのです。
しかし、その仕組みを正しく理解しておかないと、うっかり申告漏れなんてことにもなりかねません。ここで大まかにでも相続税控除について知っておくと良いのではないでしょうか。


小規模宅地等の特例

まず、純資産価額および正味の遺産額を計算する際に適用できる、資産価額そのものを下げてしまう特例措置をご紹介します。
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人等の自宅や事業用の敷地について、ある条件を満たせば相続税計算上の評価額が減額できるものです。これは、居住や事業を継続できなくなってしまうことを防ぐための特例措置となっています。
なお、減額されるのはあくまで税金計算上の評価額であって、資産価値そのものが下がるわけではありませのでご安心ください。
ここでは最も適用件数が多い「被相続人の自宅の敷地」について説明します。

この特例が適用される土地では、330㎡までの敷地の(相続税上の)評価額の80%を減額することができます。

(例)路線価30万円/㎡の土地が260㎡の場合
土地の評価額:30万円×260㎡=7,800万円
特例による減額:30万円×240㎡×80%=5,760万円
相続税計算上の土地の価額:7,800万円-5,760万円=2,040万円

これは大きな減額といえるでしょう。
この特例が適用できるのは、被相続人が住んでいた自宅の土地を例に挙げると、次のような場合です(取得者:土地を相続により取得した人)。

  • 取得者=配偶者のとき→無条件
  • 取得者=被相続人と同居していた親族(配偶者を除く)のとき→相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ所有する場合

なお、被相続人と同居していた法定相続人がいない場合には、次のケースもあります。

  • 取得者=被相続人と別居の親族→過去3年以内に自身あるいは配偶者の所有する家に住んだことがなく、かつ相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、所有する場合

基礎控除とは

次に相続税の控除に移ります。小規模宅地等の特例を踏まえて計算した正味の遺産額から、まず控除できるのは基礎控除です。
「基礎控除」とは、相続遺産の課税対象となる金額の一定額を、相続税の非課税枠とする制度のことをいいます。そして、相続税の課税対象は、不動産の価格から基礎控除額を差し引いた残額となります。

【基礎控除額の計算方法】
3000万円+600万円×法定相続人の数

計算式を見てもよくわからない方もいらっしゃると思いますので、実際にいくつかの事例を使って説明していきましょう。

【Case①】不動産の価格が4000万円、法定相続人があなた1人の場合
この場合の基礎控除額は、3000万円+600万円×1人=3600万円となります。
不動産の価格は4000万円ですので、4000万円-3600万円=400万円が、この場合の相続税の課税対象となります。
【Case②】不動産の価格が5000万円、法定相続人があなたを含めて4人いる場合
この場合の基礎控除額は、3000万円+600万円×4人=5400万円となります。
不動産の価格は5000万円で、基礎控除の5400万円以下となりますので、この場合は相続税を払う必要はありません。

配偶者控除

配偶者には、これからの生活資金のことや、これまで夫婦で協力して財産を築き上げてきたことが考慮され、特別な控除があります。これは次の2つのうち高い方まで非課税となるものです。

  1. 1億6,000万円
  2. 配偶者の法定相続分(※)

つまり配偶者が相続する財産が1億6,000万円までであれば無税で相続できるということです。
また、1億6,000万円を超えても、法定相続分がもっと大きければその額まで無税になるのです。
ただし、これは婚姻届を提出して法的に正式の夫婦になった人にだけ認められるものです。また、相続人が複数いて相続税の申告期限(相続開始から10か月後)までに遺産分割協議がまとまらず、配偶者が遺産を正式に取得していないときは、この制度は利用できないので注意が必要です(遺産を分割できない理由を税務署に届け出て承認を得れば、以降3年間この配偶者控除枠を利用することができます)。

※法定相続分とは
  • 配偶者と子供が相続人である場合
     配偶者1/2、子供1/2(2人以上のときは全員で等分)
  • 配偶者と直系尊属が相続人である場合
     配偶者2/3、直系尊属1/3(2人以上のときは全員で等分)
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
     配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(2人以上のときは全員で等分)