不動産相続についてー相続税の節税

国税庁

今回は不動産や現金を相続した場合の「相続税の節税」に関する情報をお知らせします。相続税は平成27年度の改正により、大幅に増税されました。
節税対策は、できる限り早くから準備をすることで、その効果はとても大きくなります。また、節税対策を実施することで数百万円、数千万円節税することも可能です。場合によっては相続税がゼロ円になることも。
不動産や預貯金があり、残された家族の相続税負担を少しでも軽くしたい方は、「相続税が発生するのか」確認し、また発生する場合には「生前対策」を検討されることをおすすめします。


不動産を相続する場合/相続税の節税方法

節税の方法にはさまざまな方法がありますが、その中でも特に不動産に関わるものをピックアップしてみます。
不動産に関わる節税の方法は大きく分けて3つとなります。

方法1.控除制度を利用する

「小規模宅地等の特例」や「基礎控除」などの制度を確認する

他のページでご紹介しましたが、「小規模宅地等の特例」「基礎控除」「配偶者控除」など要件を満たすことで適用することができる控除制度があります。要件を満たせば相続税額を大幅に減額することができるので、適用可能かどうか必ず確認しましょう。

相続税の控除などについて詳しく見る

相続した土地に建物を建てる

相続財産に土地がある場合、建物を建てることで、「小規模宅地等の特例」等の適用によって最大で80%も評価額を下げられ、節税できる可能性が高まります。

方法2.相続財産そのものを減らす

土地などの相続した不動産を売却する

相続した不動産を売却し「相続税額の取得費加算特例」を利用することで節税。 相続税そのものの節税ではありませんが、相続後に利用できる制度です。 こちらについて後ほど説明したいと思います。

方法3.相続財産の評価額を下げる

「正しい不動産の評価」で余計な納税額を減らす

相続において、土地家屋の評価は実際の不動産の状況によっても大きく異なります。例えば、土地や家屋の形や、接道状況、陽当たりなどです。
例えば、一般的な市街地の土地の不動産価値は、毎年7月1日に公表される路線価図に定められている道ごとの価値(路線価)からその不動産の価値を算出します。
さらに、考慮すべき事情がある不動産の場合、それぞれのケースごとに定められている補正率を土地の評価額に掛けて減額することが可能です。この補正を行うことで不動産評価額が大きく異なり、納税額を減らすことができます。
正確に土地の評価を行うには相続税に強い税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談・確認することもおすすめです。
フロンティアホームプラスでももちろんご相談いただけます。

国税庁ホームページ 相続財産や贈与財産の評価

相続した空家を賃貸にする

相続した空家を賃貸にするだけで評価額を下げることができ、相続額を減らすことができます。


相続した土地にアパートやマンション、貸家などの賃貸を建てる

方法2.に書いたように相続財産に土地がある場合、建物を建てることで「小規模宅地等の特例」等の適用によって節税でき、さらにその建物をアパートやマンション等の貸家にすることで、節税効果はさらに大きくなります。 こちらについても後ほど説明したいと思います。


土地を分割する

土地を単独で相続するより、分割して相続することで土地全体の評価額が下がる場合があります。

土地などの相続した不動産を売却して相続財産そのものを減らす方法について

ここでは「方法2.相続財産そのものを減らす方法」に書いた「土地などの相続した不動産を売却する」ことにより「相続税額の取得費加算特例」を利用し節税をする方法について説明したいと思います。
相続税が多額になる場合、現金で納付するのは大変なので土地などを売却するケースも多いと考えられます。
しかし、通常は土地などの不動産を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して所得税および住民税が課税されてしまいます。

譲渡所得額の計算方法
譲渡所得=売却金額-(取得費※+譲渡費用)
※取得費とは
土地の場合には購入代金と購入時の仲介手数料その他土地の取得のための費用の合計です。建物についてはその金額から減価償却費相当額を差し引いた額となります。

課税率は譲渡した財産の所有期間によって異なります。

譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるもの
譲渡所得の20%
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以内のもの
譲渡所得の39%

これでは相続税を支払うために土地を売ったのに、その利益に対してさらに税金がかかってしまうことになるのです。
そこで、この税負担を軽減するために存在するのが「取得費加算特例」です。

相続税額の取得費加算特例とは

「相続税額の取得費加算特例」は先にお伝えしたとおり、相続税そのものの節税ではなく「相続後」に利用できる制度です。
この特例では、相続によって取得した不動産を一定期間内に売却した場合、既に支払った(あるいはこれから支払うべき)相続税額の一部を取得費として計上することが認められています。
この特例を受けるための条件は次の3つです。

  1. 売却するのが相続や遺贈により土地や建物を取得した者であること
  2. その土地や建物に相続税が課税されていること
  3. その土地や建物を、相続税の申告期限から3年以内に譲渡していること。相続税の申告期限は相続が発生してから10ヶ月なので、合計で3年10ヶ月となります。

取得費に加算できる額は、

土地の場合
相続税額×[(売却しないものも含めて)相続した土地価額の合計÷相続税の課税資産額]
建物の場合
相続税額×[売却する建物の価額÷相続税の課税資産額]

となっています。

例:各1億円の土地を3つ(計3億円)の土地を相続し、相続税の課税価格は3億円、支払うべき相続税が1億円だった場合
このとき取得費に加算できる金額は、土地をいくつ売ったかによらず、
1億円×[3億円÷3億円]=1億円
となります。

相続財産を売却する場合は早めに済ませることが大切と言えそうです。この特例を受けるためには確定申告が必要となりますが、効果もそれだけ大きいのでオススメの節税方法です。

土地などの相続した不動産を賃貸にして相続財産の評価額を下げる方法について

相続した土地に賃貸不動産を建てる

アパートやマンションなどの貸家が立っている土地は「貸家建付地」となり、評価額を下げることができます。
借地権割合・借家権割合は路線価図などによって地域ごとに定められています。賃貸割合は当該家屋を賃貸にしている割合です。

【貸家建付地の評価額の計算方法】
貸家建付地の評価額=土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

これを計算すると、上の画像の通り、土地の評価額は20%前後下がることになり、それによって、納税額も大きく異なってきます

相続した空家を賃貸にする

賃貸にすることで評価額が下がるのは土地だけではありません。空き家などについても、それを賃貸にするだけで評価額が30%下がります。

【貸家の評価額計算方法】
貸家の評価額=建物の評価額×(1-30%)

現金を相続する場合/不動産を活用した相続税の節税方法

前回の小規模宅地等の特例と同様、資産価額そのものを下げてしまう方法です。こちらは生前にもできる節税対策として相続税そのものを減らすことが可能です。 今は不動産を所有していない場合、相続対策としてご検討をおすすめします。

自宅を新築・購入する

現金や預貯金は相続税の税金計算のもとになる「相続税評価額」を下げることができません。しかし、不動産を購入すると、時価よりも低く評価され、不動産の相続税評価額は、現金で持っているときよりも約3割価値が下がります。自宅を新築・購入するこの方法だと以下の2つの方法を併用することができます。

  1. 現金預金よりもで新築・購入した不動産の方が評価額が低くなる
    5,000万円の現金預金 > 5,000万円で新築・購入した不動産
  2. 前回紹介した特例も利用することができる。
例:2,500万円の土地に2,500万円の建物を新築し、そこに子どもと一緒に住むケース
このとき、小規模宅地等の特例が適用できるとすると、相続税計算上の評価額は次のようになります。
土地:2,500万円×80%(路線価は時価のおよそ8割)×20%(小規模宅地等特例)=400万円
建物:2,500万円×60%(固定資産税評価額は建築費のおよそ6割)=1,500万円
合計:400万円+1,500万円=1,900万円
となり、課税対象となる資産の評価額が現金の場合に比べて3,100万円減額できることになり、税率10%の場合でも310万円の節税となります。

生前にできる相続対策/生前贈与

自分が亡くなった後に残された家族への負担を軽くするために、生前にできる対策です。
昨今では「終活」という言葉が定着してきましたが、終活の1つとして生前贈与をすることで、相続資産を減らしておくという方法をご紹介します。

子どもや孫に住宅資金を援助する

贈与税は1年間で1人当たり110万円までは贈与税が非課税になります。
そこで、一度に多額の財産を贈与するのではなく、毎年少しずつ贈与する方法があります。さらにより節税効果を得られるようにするのであれば、子どもや孫の住宅資金援助をする「住宅取得資金贈与」という方法があります。

住宅取得資金贈与とは
生前に自己の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、「住宅取得資金贈与」で最大3000万円が非課税の特例の適用を受けられます。 父母や祖父母などの直系尊属から、居住用家屋の新築や増改築を行うための資金を贈与する場合、一定の要件を満たすことで最大3000万円を控除することができます。 住宅取得等資金の贈与者が亡くなった場合、非課税の特例の適用を受けて、贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

このように多額の相続資産がある方は、不動産を活用することによって、大きな節税効果を得ることができるのです。 いずれも手間がかかる方法ではありますが、その効果も絶大です。 専門家に相談すると手間を大幅に軽減することもできますので、相続税額が大きくなりそうな方は調べてみる、一度専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。